新宮山彦ぐるーぷ 第1725回

竜口尾根縦走 又剣山〜クラガリ股〜笙の峰〜小処温泉


実施日  平成25年10月13日(日)快晴 最低気温10℃

参加者   川島 功 前田 正 湯川一郎 瀧本昭太郎 
       生熊千満子 畑林清子 高階美根子 齋藤和美 
       榊本真仁 佐藤優美子 乾 克 巳
       男6名 女5名 計11名

配車協力 沖崎吉信 奥村順夫

行程予定 集合道の駅吉野路上北山8:15 又剣登山口9:00 又剣山頂9:30 丸塚山10:20 P1320 11:30-12:10
       クラガリ股分岐13:00 笙の峰14:00 小処温泉16:00
行程実績 新宮組登山口ヘ直行 全員集合9:00-925 又剣山頂9:50 丸塚山10:30  P1320 11:40-12-30(昼食)
       クラガリ股分岐13:15 笙の峰14:10 小処温泉16:00 又剣登山口16:45 解散17:20

 過去の統計から体育の日は晴れるとのことでこの日に決めた。

 朝から申し分のない快晴で、前日まで記録を更新していた夏日も肌寒く、車では今秋初めてのヒーターを入れて集合場所に急いだ。

 吉野広域消防署の前で通行止めのバリケードに驚いた。聞けば白川地内で道路決壊があり全面通行止めと言う。我々は上北までなので理由を述べ通過した。恐らく新宮組は知らないだろうと、同乗の佐藤優美子さんから携帯で連絡を入れる。運良く池原の手前を通過中で電波が入り、新宮組が予定していた小処温泉への車デポは奈良組がするから、新宮組はサンギリ林道に回り、又剣登山口に直行して貰うように伝えた。あとは榊本さんと瀧本さんへの連絡だが、瀧本さんには直ぐに繋がり「ラジオのニュース」で聞いたとの返事。榊本さんの携帯が分からない。その内に道の駅に到着したら、すでに榊本さんが到着しており、道の駅前で通行止めの整理をしている係員と話している。直ぐに瀧本さんが到着したので、我々は小橡の小処温泉に行くと許可をとり急いだ。助かったのは集合時間が8:15なのに7:40には全員が揃っていた。車をデポして登山口に急いだら、巡視車や池原からの強行突破と思われる車が多かった。それでも予定通りの9時には登山口に到着した。新宮車が登山口で止まらずにかなり通過してしまったが、25分遅れの9:25に登山口に取り付けた。

 四日前の台風通過で心配したが、何の問題もなく快晴の空の彼方に連なる大峰山脈の山並みを観ながら歩いた。雲ひとつ無く、行者還岳、弥山、釈迦ヶ岳の彼方に台形の笠捨山の果てまで見渡せることが出来た。取り付きから25分で又剣山頂に到着。昨年の山行時に設置した山彦の山名板が風雪に耐えて鎮座していた。

 快晴の彼方に連なる山々の眺望に見取れ、しばらく動こうとしない。丸塚山へは予定の時間より10分遅れで着いた。畑林さんが遅れている。久し振りの山歩きでしんどいと言う。ペースを崩さないようにゆっくりと歩いて貰う。

まもなく岩の点在するピークに到着する。日本庭園を思わせる手頃な岩が点在しているので、かってこの場所を石の広場と命名したが、昔からあったのか、それとも誰かが名付けたのか「五兵衛平」という名が付いていた。2013年の山と高原地図にはすでに記載されていた。ブナとカエデが点在する山のオアシスの様な場所だ。4〜5日前まで下界では30℃を超える日が続いていたのでカエデも青々としている。深紅に染まった時に来たら、高級ホテルの庭園も顔負けの素晴らしい情景が広がると思った。

しばらく歩くとP1320への下りに差し掛かる。広尾根のP1320は遠くから眺めてもスケールの大きさがよく分かる。広尾根の鞍部に差し掛かるとヒメシャラの林になり、その中にヒメシャラの巨樹が一本立っている。恐らく300年は経っているだろう。二人がかりで手が回る太さだ。周りのヒメシャラの林はこの巨樹の子供達と直ぐ分かる森の主だ。ヒメシャラ林を抜けるとP1320への広尾根になる。銘々が好きなルートで登っている。下草もなく歩きやすい。周りには何百年も経ったかと思われるブナの巨樹の倒木が目立つ。

生熊千満子さんが喘ぎながら登っている。「生熊さん後ろを振り返って観て」と声を掛けた。歩いてきた又剣山が間近に見え、その先には釈迦ヶ岳を主峰とした大峰連山が手に取るように見渡せた。高階美根子さんも一緒になり「素晴らしい」を連発した。



いつの間にか、畑林さんが快復したらしく速いペースで歩いている。

程なくピークに達して昼食とした。11:40分着である。計画が11:30だからスタートの時間を考えると少しペースが速い。30分程で昼食を済ませ、大蛇ーを正面から見渡せるビューポイントを探しに行く。ブナの倒木に老菌ではあるがビッシリとナメコが生えている。シロになっているようで、毎年出るだろうと思った。ピークから100mほど行くと岩稜の周りの木を切り開いたビューポイントに出た。完全な自然林になっているから、誰かが見渡せるように切り開いたように思われる。東の川を挟んで丁度大蛇ーの真正面に出た。上から下まで巨大な大蛇ーが丸見えだ。西の滝も中の滝もよく見える。大スケールの景観に、しばらく全員が我を忘れて見取れてしまった。何と素晴らしいポイントを見つけたものだと感謝したい。過去にこの地を訪れた人達も、先を急いでおそらくは見落としているだろうと思う。山はのんびりと行くのが良い。近くに高野槇の手頃なのか生えている。生熊さんが母の墓参りにと、高階さんが今回の山行に来られなかった舟瀬さんのお参りに欲しいということなので、適当なものを折ってあげた。聞くと舟瀬さんの娘さんが山行の少し前に急死したとのこと。朝起きて突然に心筋梗塞で亡くなられたとのこと。まだ40歳そこそことか。人生先のことは本当に分からないものだ。ご冥福をお祈り致します。

余りの素晴らしさで時間が経つのも忘れ、予定より10分超過でスタートした。

ブナの巨木が茂る広尾根の下りが続き、45分で西大台の分岐クラガリ股に到着した。実際の登山道と地形図が示す尾根ルートが合わないが、初めての人も参加しているので登山道を歩く様に選んできた。地形図の尾根道を行くと20〜30分は短縮できると思われるが、ブッシュなどの状況確認が出来てないので安全策をとった。    


尾根とは違って人工的な登山道は至る所で崩れていた。台風の通過で竜口尾根の崩れを心配したが、よくよく考えれば有史以来世界的にも多雨な大台の尾根が崩れないのは、崩れるものはすでに崩れて骨だけが残っている状態だから崩れる道理がない。その点人工道は弱い。自然の理に逆らって道を付けるのだから崩れる方が理に適っている。西大台に入山規制を導入して以来、この道は使われなくなった。格調のある石組みや工夫を凝らした土留めの道も荒れるがままになっている。大台ヶ原は車で行く山になり、昔ながらに歩いて登る人は皆無になってしまった。寂しい気持ちで倒木を鋸で引きながら歩いた。
沖崎代表から笙の峰の山名板を託されて来た。川島代表が担いで上げてくださった。瀧本さんと二人で杭になる手頃な立木を物色し、杉の倒木から適当なものを選んで上がった。

榊本さんが5時までにサンギリの東屋まで戻りたいと言うことで笙の峰からの下山のピッチが上がった。
今日の夕日は釈迦ヶ岳に沈むという珍しい日であるらしい。
いつものんびりと歩いている者にとっては苦痛になるような速さだ。笙の峰から小処温泉まで先頭者の姿を捉えることが最後まで出来なかった。

昨年歩いた時と違って新しい道標や指導標が立っていた。行政なりに苦心をしているのが読みとれた。それでもこの道は、これからも秘境への道として、このまま残しておいて欲しい気持ちの方が勝った。
 小処温泉には足を引きずりながら当初の到着時間の16時丁度に到着した。小処温泉は長い休館を経て今年7月に再開されたが、気がつくといつも臨時休業だった。以前にオーナーの話を直に聞くことができ、冷泉を温めるのには24時間温めなければならず、人件費などを含めると一日の経費が5万円を超えると言っていた。入湯料500円で100人、1000円でも50人が入館しないと経費も出ないことになる。以前は西大台への往き来で賑わったがと、嘆いていたことを思い出した。現在はどれだけの人が訪れるのか、本当の秘湯になってしまった。

サンギリ林道は朝と違って車の数も増していた。

東屋には16:45分に到着。沈み行く夕日が釈迦ヶ岳の真上に差し掛かっていた。あかね色に染まった西の空を観ながら、事故もなく歩き通せたことに感謝し、こころの中で手を合わせた。


            
東京からこのイベントに参加して下さった湯川一郎さんは、竜口尾根縦走を満足して頂いたのか、少し気になった。

配車の協力を頂いた沖崎さん、奥村さん、本当にありがとうございました。  
                                           


                                                             文・乾 克 巳
         
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